さくらについてわたしはなにも知らないにひとしい
木屋 亞万

かわずが関節炎になりやすい季節
うぐいすは宣伝活動に忙殺され
太陽は黄ばんだ寝間着のまま
おがわはさらさらを研究している

野草はこどものやわらかい
残酷な手をおそれている
樹木は年々求愛を激化させ
愛の弊害で顔面洪水が相次ぐ
崩壊の季節がきたものの
大団円にはほど遠い

さくらのおそろしい顔は
幹の奥で閉じている
はかいの音を求めている
華が咲くのに音はなく
花の散るのに音はない
雨が降るのに音はあり
雪が散るのに音はでる

はるは心を壊していく
叩いても弾いても鳴らない胸
こころが壊れる音を教えて
屋根瓦わるる雨の日も
はじまりに耳をすますから
かさつく胸を抱えつつ
窓にもあたまを押し当てよう

はるがふゆに固まった
エイチツゥオゥ壊していく
音で溢れかえるきせつ
声がながれだすきせつ
はちは羽根をふるわせ
鳥のさえずる梢ふるえ
さくらのさがす音を
提供しようと響きあう
音色のなかに何ひとつ
みつけることができずに
花びらを散らしていく

幹の奥深いところで
心臓がしめつけられている
さくらの木々のしたを
何もしらないわたし達が
えがおで歩いている
みんな始まりを聞くのに夢中で
さくらの壊れる音をしらない
否さくらが壊れていく事を知らぬ
その音はさくら自身も知らぬのだ


自由詩 さくらについてわたしはなにも知らないにひとしい Copyright 木屋 亞万 2008-03-04 11:58:53
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