疑惑のひと
恋月 ぴの

「おつかれさま」

思わず「えっ」と聞き返してしまった
久しく労わりのことばなんて無かったのに
何かにつけて話しかけてくるし
誰かさんからの着信メールを気にしなくなった

あなたの言葉を素直に受け入れることできなくて
笑顔の裏に何かあるのかと勘ぐってしまう

不定形の幸せに満たされていると
哀しみとかそんなものに焦がれてしまい
よそよそしい態度に安らぎさえ感じていた

或る日突然現実を突きつけられて
半狂乱のまま泣き叫び
殺意の眼差しで睨み返す私の姿がここにある

何事も無かったような顔のあなたに
どうしようも無い程の苛立ちを抑えきれず

通勤駅へと急ぐあなたの背中に向けて
指で作った拳銃の引き金を引く






自由詩 疑惑のひと Copyright 恋月 ぴの 2008-03-03 20:04:16
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