乾いた風が
風音


 カウ・ボーイがあたしに言った
 
 「忘れ物だよ」
 
 あたしは
 忘れたんじゃない

 わざと置いていったのだ

 もう
 いらないから

 「よかったら
  あげるよ」

 若いカウ・ボーイも年取ったカウ・ボーイも
 みんな振り返った

 「まだまだ使えるぜ」

 「とにかくもういらないの」

 こうやって
 どれほど大切なものを
 あたしは失ってきたのだろう

 ビールの匂いのするその空間で
 あたしは暫く立ち尽くす

 もう、いらないの。

 とにかく
 もう、いらないの。

 愛とか夢とか希望とか
 とりあえずはそこに残して

 あたしは店を出た。

 乾いた風が
 スカートを翻した、


自由詩 乾いた風が Copyright 風音 2008-03-02 19:42:10
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