白夜子
ヨルノテガム
雪は
夜と共に眠る
家々の景色はどこまでも均一に膨張し
泣く子や悪魔や憎悪をシラッと黙らせてしまった
たった一日に結晶された冬
道や隔ての無い大体の銀世界が現れて
全てが再生への静寂を待つ
命を転がして
太らせて
目や鼻や口、帽子や手や出べそをつけ
空虚で充満した分身の人間を創り出す
それは かすかな祈り。
白夜は祈りの目的を凍らせる
冷えきった両手へ息を吹きかけること自体が
「願い」の象徴的な行為のように思える
手が少しでも温まったら
もっとフザけて おどけて
この途方もない綿菓子を
つねったり、持ち上げて 落としてみる
誰も居ない景色が 温かな夜である