二十歳のころ
伊那 果
吾の中に沈んだ言葉掘り返す道具を空に忘れてきたり
一人でもよし我が言葉狂うほど愛する人と出会ってみたく
稚なさを勢いで継ぐ時期は過ぎ底をさぐれど我見つからず
雪降らぬあたたかき冬 成人の称号を手にねじ込まれたり
晴れ着にてはしゃぐ人らをテレビにてながめおる我が成人の日に
朽ち果てた時はひらひらとひとひらの灰になりたい 夕焼け小焼け
部屋に住む電機具たちのおたけびが明けゆく夜の眠りにまざる
自らの渇きを嘆きいるものの潤いとは何かすら知らず
自らを癒す言葉を前にして言葉を愛する幸せに酔う
どこまでも続く漆黒の間から青が静かにやってきました
まっさらに闇に包まれし空の底 茜の名残においはたちて
愛し合うことに羞恥はなくなりて過ぎた時間のふとかなしくて