いつも波よせて、僕は
たりぽん(大理 奔)

弧を描く波打ち際で
世界の縫い目をたどる短い旅路
遠ざかる、境界を引き寄せ
空と海を縫う指先が左右に揺れる
「こっちだよ」または「バイバイ」
その境目のメトロノームが
いつかのあなた

   ミュールを両手に
   波跡の周波数
   ゆらゆら、時折静かに濡らす
   足跡が途切れる

何気ない場面を思い出す
水平線の先に伸びた
飛行機雲の行方
やさしい視線の先
大切な言葉が聞こえない
見えないものばかりが
喫水線なみうちぎわに満ちあふれている

失うということは
失いたくないということ
喉がれるほど
叫んだ言葉は聞こえない
誰にも、僕にも
波が縫う音だけ
遠く、近く
思い出すものはありふれて

あなたを境界線に置く
その場所を輪郭にする
ざわめいている
海を見つめている
ずっと、海を見つめている
僕は失ってしまうから

満たせるはずのない海に
遠くの雪雲から流れてくる雪
海を見つめている
ずっと、海を見つめている



自由詩 いつも波よせて、僕は Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-02-23 23:28:06
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