わたくしごと
高島津諦
詩をうたおうとして気づいた癖
「私」という言葉を使う癖
私は 私が 私の 私に
私の(ほら、また私)詩は「私」にまみれている
それはつまり 私は私のことしか好きじゃあない ということ
綺麗な物語が好きなんじゃない
物語に投げ入れた私が好き
悲しい歌が好きなんじゃあない
悲しさに浸っている私が好き
綺麗な言葉が好きなんじゃあない
綺麗な言葉を纏った私が好き
私は私に首ったけ
私の目はぐるりとひっくりかえり
頭蓋骨の奥を 自分の脳みそだけを 見詰めている
そうやって自分を探って
けれど何が見つかったのだろう
さ迷う冒険者
逞しい戦士と美しい妖精とすばしこい盗賊と白皙の賢者と
遺跡の奥で見つけた宝箱の中身は
空の額縁たった1つ
物語が好き
歌が好き
言葉が好き
本当に 好き?
私が好きなのは私だけ
物語に 歌に 言葉に
私を探そうとしているだけ
空っぽを埋めようとして
言葉を借りて
思想を借りて
夢を借りて
合わないピースを無理やり嵌め込んだパズルは
触れられただけで崩れ落ちた
何を描くことも出来ない 空っぽの縁は
私を飲み込む淵になって
深く 深く 沈む
何も聞こえない
何も届かない
そこへ