「ノコリモノ」
菊尾

追わないよ
辿りもしないよ
もうただの幻だと知っているから
朝に沈み始める身体
声があなたの前では響かない

泣いていた
理由も分からずに崩れるように
背負っているのはいつかの痛み
誰にも何も話さずに
抱えた痛みを馴染ませようとしていた

戻れないの
ここまでの道のりは埋めてしまうから
切り離したこの場所で立ち尽くしたまま
あなたを他人に変えていく
悲しくもない現実が欲しいだけ


仕方が無いと割り切って
諦めた想いは何処へ向かったの
救いようの無いこんな感情は
とっくに期限切れを起こしているのに
沈めても燃やしても消えてはくれない
夢なんて潰えたはずなのに
身体は生きるために夢を見せようとする

あなたの匂いも仕草も口癖も
すべて忘れたいのに
記憶は曖昧に残ってしまう
また眠れない
閉じれば瞼の裏のあなたが笑いかけるから
だからまた、眠れない


自由詩 「ノコリモノ」 Copyright 菊尾 2008-02-20 19:48:58
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