鏡の女
beebee




楽しそうな女が一人、
鏡の中の自分に向かい合って、
自分自身のために化粧をしている。
口紅をつけて、自分に
ニッと笑いかける。
あんまり笑いすぎて目尻には
皺がある。
口の回りにはこわい産毛も光っている。
四十をだいぶ過ぎた女が一人、
自分の顔を塗り込めていく。
悲しいこともあったろうに、
憤ろほしいこともあったろうに、
頬紅をつけて、
自分自身に向かって
微笑んで見せる。
鏡の中の彼女は
息子の私なのかも知れない。
鏡の中の彼女は
彼女の夫なのかも知れない。
あるいは、
冷たく自分自身を見詰める、
彼女自身かも知れない。
これからも彼女は一人で化粧をするのだろう。
その時彼女は知っているのだろうか?
本当の自分自身の姿を。


自由詩 鏡の女 Copyright beebee 2008-02-19 23:30:49
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純情詩集