お月さんいくつ
佐々宝砂

お月さんいくつ じゅうさんななつ


月齢は十一、
若潮の波、明け方の空に低い低い月。
月齢は十一、
大きく切り分けた夕張メロン。

あの子を産んで この子を産んで
だぁれに抱かしょ


わたしはひとりで空をみる、
見上げるのではなく、
見渡すように、
明け方の空は案外狭い。

お月さんいくつ じゅうさんななつ


月の年齢は誰にもわからない。
月齢は年齢ではないから。
月の年齢を推測するのは、
曾祖父の没年を推測するより困難だ。
当たり前の話だが。

お月さんいくつ じゅうさんななつ


わたしにも若いときはあったのだ、
と嘆息するのは早いだろうか。
月にくらべたら、
もちろんわたしは子どもに過ぎない。

あの子を産んで この子を産んで
だぁれに抱かしょ


もしもおまえがまだ子どもを産めるならば、
月よ、わたしに抱かせておくれ、

お月さんいくつ じゅうさんななつ
まだとしゃ若いね



自由詩 お月さんいくつ Copyright 佐々宝砂 2008-02-17 23:55:32
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