2月14日、朝
北大路京介
2月14日 バレンタインデー
モテないオイラにゃ関係ない日
最低気温マイナス2度 寒いのに コートもマフラーも校則違反
バカバカしい校則とも もうすぐ おさらば
卒業式まで おとなしくしてれば春からは大学生よ
学校までの坂道のぼって、校門くぐる いつもどおり
3年3組 出席番号8 "3308" オイラの下駄箱ナンバー
いつもなら 下駄箱をあければ
いつもなら 上履きが見えるだけ
いつもなら 下駄箱をあければ
いつもなら 上履きが見えるだけ
赤いチェックの包装紙 10センチ四方の小箱
ドッキリ? ねぇ どっきり?
誰からなの? 何者の仕業なの?
青春の鼓動が3倍速に いまままでの想い出が走馬燈のように
血液逆流 全身に寒気 視界が狭くなっていく
もしかしたら このまま死んでしまうかもしれない
おおきく 息を吐いて
ゆっくり 息を吸って
まわりを見渡し 誰もいないこと確認したら
赤い小箱に 手を伸ばす
さぁ 誰からだろう? 誰からでしょう? 男女関係のスタートライン?
とくに親しい女の子がいるわけでもないし
むしろ男としか喋っていないし
女っ気のない高校生活3年間
女っ気のない人間生活18年間
もし これをきっかけに お付き合いすることになるとして
どこにデートに行けば良いのだろうか
もし これをきっかけに 恋人ができることになるとして
ひやかされたりしないだろうか
どうも 自分の顔が にやついているような気がしてしかたない
頬の肉が 筋肉痛に 頬の肉が 筋肉痛に
いま どんな顔をしているのだろう ぜったい誰かに見られたくない
下駄箱から ゆっくりと 小箱を取り出した
たいせつに やさしく 小箱を取り出したんだ
目に映ったのは 読み取ったのは 可愛い字で 『 北川くんへ 』
俺、「北大路くん」だし。。。 北川は、隣の下駄箱だし
そりゃ そうだろうな ベイベー
好きなヤツの出席番号ぐらい ちゃんとチェックしとけよ
北川は サッカー部のエースだし ジャニーズ系で 爽やかだし
当然だ 当然だ モテ要素満載だ
取り出した小箱を 赤いチェックの小箱を 北川の下駄箱に入れて
「贈り主の想いが無事届きますように」なんて 祈りも込めたりして
なんか疲れちゃったので 授業出ないで帰ろう
ズル休みするにしても 外は寒いし 心はもっと寒いし お昼まで保健室で寝かせてもらおう