それでもきっと季節は回る
明日殻笑子

こんにちは、
あなたはだれですか?
私はずっとここにいて
巡る春を待ち続けているのです


そうですね、
ここはとてもきれいでしょう
いつも隙もなくあたたかい
何から何まで色彩で満たされて
ねぇ 窒息出来るでしょう 幸福感で


私がここに、
初めて来たときからずっと
ここはそういう場所でした
花が咲き
鳥が鳴いて
やわらかな南風の舞う


濃緑が繁らない場所
散るいとしさを得られない場所
深々という言葉の
存在しない場所
まるで他人ひとより早かった私への
あたたかくしたたかな罰であるように
花は咲き
鳥は鳴いて
やわらかな南風が透明な涙を無機質に拭い去って行った


ねぇ あれから随分経ったみたいで


吹き荒ぶ花びらを
見上げていると肩がこるのに
それでもここには幸福感の他には
何の感情も存在しない


そちらはここからよく見えたので
呼吸の合間に覗き見ました
憤ったり
首を傾げたり
唇を噛んだり
微笑んだり
私の想像などは遙かに飛び越えて
言うなればプラスもマイナスもジャンクもセンチメンタルも
いっしょくたに楽しめるテーマパーク・・・


何ともろくでもない素敵な世界!


愛していた
大好きだったんだ
終わらすわけにはいかなかった
終わるわけには いかなかった


ポイズンピンクの涙が流れて
深呼吸の幸福感を不意に思い出しました


それからです、
足元に揺れる花に微笑めるようになったのは
それからです、
昔のようにギターを鳴らして
やわらかな風に負けない声で
大好きな歌をうたえるようになったのも
それからです、
小鳥の方から近づいてくれるようになったのは 


それからです、
終わらない春に終わりが来て
いつかきっと春を待ち侘びる日が来ると
失くした心に炎を灯せたのは


変わり続けること
変わらないもの
永遠と呼ばれる全て
巡る巡るあたたかな想い
ここで笑います
これからもここで
どうでもいい
大好きな歌をうたって待っている


「            」


だからどうか泣かないで
またここで心踊る
素敵な景色をたくさん見つけたから
いつかここに来ることがあれば
何百と紡ぐ歌をいくらでも聞かせてあげる


こんにちは、
あなたはだれですか?
僕はずっとここにいて
巡る春を待ち続けているのです。


自由詩 それでもきっと季節は回る Copyright 明日殻笑子 2008-02-10 23:20:57
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