きのうの、鹿
clef

鹿の眼の半球は
酸素と水の被膜の下で
微動だにしないで
こちらを向いていた


つややかな悔悟の眼差しは
きっと
通り一遍のあいそなのだろう


表も裏も同じものなのに
どちらも否定しないので
月の裏の説明をしなければならなくなる


和え物をつくるみたいに
なれ合いながら
献立の相談をした
夕餉の鹿に



自由詩 きのうの、鹿 Copyright clef 2008-02-08 18:53:45
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