過呼吸
水町綜助

町はやはり動いて


流れて
流れて
この固い冬もいつかわすれて
また息をする
そのときある風景を吸い込んで

流れ消えてゆく落ちた葉の
葉脈は細緻で
伸びていった先よりも
うつくしかった脈拍をたどる

とても暑かった日
浮かび上がった血のみちすじから
きっ、と昇り立つ
生きているにおい
それを嗅いでやはり瞳もすこし熱を持つ

過ぎていって
消えてはいない
過ぎていって
かたちを無くす
いとしいと
言ってしまってすぐに
疑わしさを嗅ごうとするほど
気弱だから
いま過ぎてゆく
その瞬間だけ
かたく手のひらを閉じるよう
見つめつづける


自由詩 過呼吸 Copyright 水町綜助 2008-02-07 02:10:35
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