佐藤伊織

「それ」は立ったまま枯れていた

純水の雨が
ビーカーの中で
音もなく


黄砂の舞う海
は 枯れた鉢の上

無数の猫の鳴きまねを
する
唇が暗い空に
浮かんでは消える


おやすみ
もうすぐ 降ってくるよ

その少年は弟に毛布かけながら
空を見上げた

頭を上げた 子の
視線の先


幾筋の光と
巨大な 器から落ちる


砂雨


耳を塞いだ鳥の
螺旋に描いた軌跡の
中心線


巨大な立ち枯れた一本の軸によって




支えられたままに









自由詩Copyright 佐藤伊織 2008-02-04 03:14:07
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