野辺送りのストーン
月見里司

たとえば、亡骸を誇らしげに焼き払うような
上手ではない水切りの音
整備された河川敷と、焚き火の跡が
ただそれが魚たちであっても

火葬場が、通学路沿いにあって
人を焼いているときはグレープフルーツの匂いがすると
噂だった
南風の吹いている日は柑橘の、渋いような酸いような香気が
坂の下から届くような気がした
授業中に教室の窓を閉めて、
立ち昇るかもわからない煙の方角を眺める

多くの足音は、来た道に染み込んでいて
まっすぐ、前を見て歩きながら祖母が唱える和讃を
知らなかった
同心円を繋いでは千切る
水切りの石が、向こう岸に届くほどに
魚の群れから一尾、離れていく


//2008年2月3日


自由詩 野辺送りのストーン Copyright 月見里司 2008-02-03 11:52:53
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