茄子とひき肉のカレー
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乾いた目覚めに粉々になりそうな朝、
ぎりぎり折れない体を運んで、
そしてわたしの学生時代を知らない人々に囲まれて
考えることを忘れようとする
笑うことに努めようとする
上手に謝れるように練習する
毎日
自分が何の役に立っているのか分からないまま
敬っても居ない人を敬ってるふりしている
毎日

ただいま、と言うと
おかえり、と返す君がいて
今日はカレーにしようねって笑う
茄子とひき肉のカレー、食べたいって言ってたもんねって

おいしい匂いと君の背中
ハラハラする見事に不器用な手さばき
同じものを同じときに味わえるなんて
まるで家族みたいで
遠くの遠くに置いてきた
罵声まみれのスウィートホームが少し恋しい

だからわたしは毎日がくだらなくてもいい
だからわたしの存在は無意味でもいい
だからわたしは最後の日が恐くない

冷たい麦茶を口の端からこぼしながらがっついて
やけどしても、今の時間の全てを食べつくすんだ
終わりは恐くない
君が笑う
汚いなあって笑う
だからわたしは毎日がくだらなくてもいい
うちから漂うカレーの匂いが誰かをほんのり笑顔にしている予感がする





自由詩 茄子とひき肉のカレー Copyright ________ 2008-02-02 18:28:24
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