ひとつ しあわせ
木立 悟





ひかりがひかりに逢えるように
そうであったうたに戻れるように
ひかりがひかりになれるように
そのままの水を飲めるように



足にからまるまだらな音
消しても消しても残るもの
ひとつたしかに
岩となるもの


ゆたかな と
風がつぶやく
何に向かってではないのだろう
何のためにではないのだろう


見つめたいだけ見つめつづけて
疲れたらふと閉じるだろう
祭のあとに生まれるこども
両手にこがねを持つこども


冬のうつろに満ちる陽を
錆と錆を揺らす陽を
指は知って 指は嗅いで
赤茶に笑んで


何故ここにいるのか問われていた
複数の羽 複数の羽 応えられずに
ただ消え去るものを抄おうとしていた
鳴ることのない楽器の音を


あなたがあなたにとどまらず
はばたきがはばたきをくりかえす
風が風に描く風
遠去かる水 水紋の背



手のひらを問われ
手のひらの上を問われなかった
しあわせになれない
ずっとこうしてゆく

















自由詩 ひとつ しあわせ Copyright 木立 悟 2008-01-31 09:53:06
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