土砂降りの夜
風音

その少女は
「触る手」が大嫌いでした。

いつもいつも逃げ続け
大人になっても
怯えていました。

ある日
とても信頼しているひとが言いました。
「キミが自分を傷つけても
 もしも死んでも
 ボクの知ったことじゃない」

同じ日
別の愛してるひとが言いました。
「もう感情なんてない。
 好きとも思えない」

大きくなった少女は
「触る手」が近づいてくるのを
感じました。

自由になれたらどんなにいいでしょう。
空から舞い降りられたら。
ぐちゃぐちゃにつぶれられたら。

大きくなった少女は
まだ迷っています。

胸の中、土砂降りの夜。
でも、涙は出ない。


自由詩 土砂降りの夜 Copyright 風音 2008-01-30 21:02:09
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