かたがなしい
黒川排除 (oldsoup)
砂巻き上げ騒ぐ海ひたと光に遭う
ラジオ壊れて六歳児の名を呼び続ける
指の腹を故郷に向けて押しとどめる
雨に濡れた前髪に目と水たまり
本当は白い青葉を冬に透かす
怯える者の指をくわえて走る北へ
瀕死のサイ正しい人を見ている
ひとつしかない窓開けているひらひら
水見つめていた鳥の羽を配る
もう片方ばかりがある暗い朝の街
うつ伏せだと背中で雨の象が来る
ベンチから滴る乳塩工場汚す
炎逆さに分野を逃げる列の足
海に腕広げて他人と化す 、波だ
雨よ慈しむよ匙で土曜日の窓で
倒れかかる踊り民族の個は柔き針
ひとりと椅子二脚削り出す岸の岩
屋上にワニとハシゴを隔てて住む
幽霊の足を探す沼いま放電
ザリガニ来てかなしいさかなしいたげる