かたがなしい
黒川排除 (oldsoup)

砂巻き上げ騒ぐ海ひたと光に遭う

ラジオ壊れて六歳児の名を呼び続ける

指の腹を故郷に向けて押しとどめる

雨に濡れた前髪に目と水たまり

本当は白い青葉を冬に透かす

怯える者の指をくわえて走る北へ

瀕死のサイ正しい人を見ている

ひとつしかない窓開けているひらひら

水見つめていた鳥の羽を配る

もう片方ばかりがある暗い朝の街

うつ伏せだと背中で雨の象が来る

ベンチから滴る乳塩工場汚す

炎逆さに分野を逃げる列の足

海に腕広げて他人と化す 、波だ

雨よ慈しむよ匙で土曜日の窓で

倒れかかる踊り民族の個は柔き針

ひとりと椅子二脚削り出す岸の岩

屋上にワニとハシゴを隔てて住む

幽霊の足を探す沼いま放電

ザリガニ来てかなしいさかなしいたげる


川柳 かたがなしい Copyright 黒川排除 (oldsoup) 2008-01-30 13:50:22
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