「半月の夜」
菊尾

迷いました
立ち込めました
自分を見失い
不穏な空気は濃密です
君がくれた記憶は夜毎一粒ずつ飲んでいて
そうやって体を沈めます

半月が揺れるコップの水面
奥歯で噛みしめる馴染まない日常のこと
浮き足立って跳ね上がって
掴んでぶら下がれれば
あの半月だって身近な存在
薄く笑う夢世の一時です

こうやってこのままを閉じ込めて
信じ込んだ幻想を永遠だって名付けたり
おかしいのは多分僕の方で
それをオモチャに遊ぶのが君

頼りなく感じる宵の口
乗り切るまであと数分の会話が愉快
形変わる前に色濃くなった半月
掴んでぶら下がったら僕の体も変化が始まる

こんばんは
こんばんは
奇遇な必然の君
今夜は何で愉しもう?
抵抗できないほどの
素敵な虚構を
今夜もきっと創るだろう


自由詩 「半月の夜」 Copyright 菊尾 2008-01-26 02:19:04
notebook Home 戻る