ルーズアンドタイト
恋月 ぴの
ルーズな踝はいつのまにか姿を消し
タイトな紺色が街を闊歩する
こんな横並びを欲する時代だからこそ
曖昧なままでは許されないと言わんばかりに
膝上近くまで引き上げられた紺色に感じる息苦しさと
「自由」と言うことばへの拭いきれない喪失感
昨日までは許されたものが
ある日突然許されなくなることもある
誰の許しを乞うべきなのか
どうして許しを乞わなければならないのか
同じかたちと同じ色
「なめんなよ!」
そんなことばにある種の郷愁を覚えてしまうように
ルーズな踝が持てはやされた日々を懐かしむ季節は訪れる
それだからこそ
股間に忍ばせた刃先を研ぐように感受性を研ぎ澄ませてみる
下りホームへ向う階段をタイトな紺色が昇って行く
隠そうともしないスカートの奥から実存ってやつが顔を覗かせ
俯いたままの僕らに青春なんて無かったことを知る