ひとひらの雪
渡 ひろこ

ひとひら
白い花びらのように

ひとひら
優しい言葉のように

私の髪に 肩に
静かに舞い降りてくる


思わず手を差し出したら
ひとひら
掌の中 ふわりと落ちた


こんなふうに
素直につかめればいいのに


臆病でシャイな私は
あなたの想いを感じていても
ゆらり ゆらりとかわしてしまう


もっと無邪気に戯れて
もっと無垢に見つめられる
天使のような大胆さが欲しいのに


宙を舞う華奢な花びらたちに
願いをこめるのは
ほんの少しだけの勇気


両手をひろげて
やむことを知らない
グレーの空を仰ぎ見る


頬に唇にやわらかく落ちる
このひとひらは
あなたの街まで続いているのかしら


溜め息のたなびく白さが
切なくてうつむくと


冷たくなった頬を
そっと撫でながら

ひとひらの雪が
ゆっくり溶けていった







自由詩 ひとひらの雪 Copyright 渡 ひろこ 2008-01-23 19:19:50
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