壁画が生んだ子守唄
こうや

壁画に眠ったままの物語をいまこそかそう
子守唄にのせて伝え授けるには今が好機なのだ

塗り重ねられた油絵のように
深みをたたえた一筋の線
その一片いっぺんにどれだけの音が染み込んでいるのだろう
それは行き去ってしまった過去の迷宮だ

壁画に住み着くの鳥は
ただこちらを凝視して当時の名残を伝えようとしている
慎ましやかな視線から何をも会得せず
遠ざかってしまう幾多の足音を耳にしても
その鳥の目は一向に曇りを知らない
何百・何千年も空気が流動し続けるなか一羽きりで

私はその点に、ただただ頭が下がる思いがしたのだ


自由詩 壁画が生んだ子守唄 Copyright こうや 2008-01-23 14:28:28
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