たけ いたけ

右手が滑らかな風を受けて心地よい気持ちがする
道端の葉が陽の光を反射して右手が暖かい気がした

猫がひょうと横切り
犬に見つめられ
自転車が身をかすめる
人の視線がこっちを見ないままで
回り込んで突き刺さる


僕の身にはいつでも夜がやってくる
道を歩いている昼間
仕事をしている間

この町の夜と同じように
星も数える程度で
数キロ離れたネオン街の反射で
ずうっと薄明るい
終焉のない夜

そして僕の脳や手や脚や腹は
どいつも勝手バラバラに生きている
どいつも勝手に孤独だ

左手は君の乳房の産毛に触れている
愛しみを感じながら遊んでいる

両足は山中を歩いていて木の根っこの感触を感じている

脳みそは疲労して彷徨う
何処にもいけないことばかり考えている
自分の全体像を描きながら何も成せずに
彷徨う
そして孤独のシンボルの館が破壊されるのを
喜んで待っているのか
悲しんでいるのか
鉄筋の崩れる音がする
巨大な機械で
ショベルカーで崩され落ちていく鉄筋
口が笑みを浮かべる

だからどうだと言うのか

僕が誰だというのか
暗い夜空にうっすらと光る星だ
あれが僕
その小さな光に放し飼いにされた
脳が苦しみ
手が悦び
脚が無邪気に歩き
腹が欲求にまみれ
街中を彷徨う


・・・・
暖かな部屋で
母さんと喋っている
聴こえない透明な会話をしている



自由詩Copyright たけ いたけ 2008-01-20 11:07:03
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