彼女は彷徨する
宇宙のもっとも昏い場所で
輝度分布と力学的質量分布の不一致を求めて
五次元を通り抜けるために
　

彼は停止する
宇宙のもっとも冥い場所で
客観的には停止した時間のなかで
事象の地平線で


彼女の彷徨は永遠かつ瞬間
彼の停止は瞬間かつ永遠
それを知るのはただ昏冥


五次元のむこうの三次元宇宙で
ここではない時空で
何かがはじまり終わるとしても



(2007.7.蘭の会詩集「BLACK」収録）