[砂嵐]
東雲 李葉

耳に入った雑言をまとめて返す力に長けても
何も無い虚空から世界を創ることは出来ない
ほころびかけた既存の台詞は深い味を出し切って
今は舌を通る音だけで足りたような演技をしている
知らないことを知るたびに知っていることが疑わしくて
拙い仮定を信じたらひび割れ始める確信の足場
折角集めた偉人の言葉も記憶の中で混ぜこぜになる
きっと稚拙な頭からでは新しい道が拓けないのだろう

教えて教えて僕だけの世界
探して探してどこの誰にも見えない視界
本当は誰も知らない言葉
本当は誰もが求める言葉
どうしてどうして湧かない真水
ざわざわざわざわ嵐の声

枯渇し切った井戸の底を石を砕いて掘り続けている
あの日その眼に宿ったきらめきが確かに本物だったなら
世界でたった一人のために歌うことくらい構わないだろう
この想いをまるごと具現化できる呪文
魔法はあると信じている
でなきゃ誰が無から有を生み出せるんだ
からからの喉を渇いた音が通っていく
昨日も、一昨日も、誰かが同じ台詞を喋っていた


自由詩 [砂嵐] Copyright 東雲 李葉 2008-01-20 03:16:05
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