peaces
鴫澤初音



   窓から PEACE 
   の旗をはためかせて 
   向かいの坂道をのぞむ
   窓からみえる坂道
   あれは どこだろう
   土曜日の 昼下り

   日曜日の 昼下り
   わたしは 
   あの坂道を捜しに行った
   犬をつれて
   
   おもったより遠かったのは
   坂道が 登りになっているから で
   
   横断歩道を渡りながら 
   遠くを眺めると
   家々のむこうに 
   わたしの家、
   PEACE のフラッグが
   色鮮やかにはためいていて わたし、
   PEACE!って 
   さけんだんだ
   





   青春18切符で帰郷するとき
   大垣駅でひとびとはわれ先に走る
   それをひとは 大垣ダッシュ と呼ぶ
   
   東海道本線の接続は
   ひどくみじかい

   乗り損ねた
   スーパーひとしくんは
   ダッシュート




 
   暴風おじさんは
   台風がくるとテレビにあらわれる
   60代半ばで
   風が吹くとカツラが飛ぶ 
   暴風おじさんには
   娘が二人いて
   一人は小学校の先生
   もう一人は暴風お姉さんだ

   暴風おじさんは言う
   暴風の中に立つというのは「道(みち)」なのだと
   長女が先生になりたいと告げたとき
   「道」を次女に伝授しようと決意したのだと
   暴風おじさんは
   それを「暴風道」と呼んでいる
   きわめれば
   暴風なしでカツラを飛ばすことだってできる

(セリフ)
  「暴風道をきわめるには
   30年はかかるんだ」
    
   暴風おじさんは
   ふだんは寝ている
   一年に一回
   はげしくはたらく

   暴風が来ないことには
   暴風おじさんの仕事がないのだ

   暴風おじさんの妻は
   一年に一度
   テレビで夫の雄姿をみまもる


自由詩 peaces Copyright 鴫澤初音 2008-01-18 23:13:44
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