占星術師の春
佐々宝砂
正月を過ぎたら
なにがなんでも
(たとえ気温が零度以下であろうとも)
春がきたと決めている。
占星術師は
(ひどく寒いのにもおかまいなしで)
窓を開けて夜空を仰ぐ。
深夜の冬空はすでに春のおもむきで
(そう、あれが、獅子座のレグルス、おとめ座のスピカ)
空っ風に吹かれながら
ゆらめく星々。
占星術師は昨年のカレンダーを広げ
(パソコンで打ち出したデータをもとに)
手書きのホロスコープを描いてみる。
出生時のホロスコープは変わらない
変わらないホロスコープのなかで
金星と冥王星は永久にスクエアなのだけれど
天頂近くの木星は
出生時の太陽と仲良くトラインで
占星術師はやや満足げにうなずく。
春はくる。
春はくる。
おそろしく寒い春かもしれないけれど
春はくる。