占星術師の春
佐々宝砂

正月を過ぎたら
なにがなんでも
(たとえ気温が零度以下であろうとも)
春がきたと決めている。
占星術師は
(ひどく寒いのにもおかまいなしで)
窓を開けて夜空を仰ぐ。
深夜の冬空はすでに春のおもむきで
(そう、あれが、獅子座のレグルス、おとめ座のスピカ)
空っ風に吹かれながら
ゆらめく星々。
占星術師は昨年のカレンダーを広げ
(パソコンで打ち出したデータをもとに)
手書きのホロスコープを描いてみる。
出生時のホロスコープは変わらない
変わらないホロスコープのなかで
金星と冥王星は永久にスクエアなのだけれど
天頂近くの木星は
出生時の太陽と仲良くトラインで
占星術師はやや満足げにうなずく。
春はくる。
春はくる。
おそろしく寒い春かもしれないけれど
春はくる。


自由詩 占星術師の春 Copyright 佐々宝砂 2008-01-17 22:14:42
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