破線
大覚アキラ

せつない

せつないよ

せつなさのなかで
火が燃えているよ

せつなさのなかで
ロケット花火が
飛び交っているよ

ああ
戦争だ

おい
おまえら
戦争なんだよ

せつないね

せつないほど戦争だね

最新型のステルス戦闘機が
ロケット花火みたいに
飛び交っているよ

おい
おまえら
これが戦争なんだよ

コントローラーを握って
Aボタン押しっぱなしのまま
Bボタンをものすごい速さで連打

飛び交うロケット花火を
巧みなステップで
右へ左へかわしながら
一人のネアンデルタール人が
歩いていく

やがて
ロケット花火は撃ち尽くされ
Bボタンを連打する音は
いつのまにか止んでいる

ネアンデルタール人は
音のない闇の中を
火のついた棒切れを
高くかざしながら歩いていく

遠ざかるほどに
光は点になり
闇に溺れそうな
はかなげな破線を描く

ネアンデルタール人の姿は
もはやどこにも見えない
破線だけが
はかなく闇に浮かんでいる

磨きあげられた石器の
黒く光る切っ先を
破線に沿ってなぞる

新鮮な肉を切り開く感触と
温かい血の匂い

まっさかさまに
太陽が
地平線から
空に滴り落ちていく

せつない

せつない朝だね


自由詩 破線 Copyright 大覚アキラ 2008-01-10 20:33:55
notebook Home