それぞれの名前で、波にとけても
たりぽん(大理 奔)

  言葉を投げ合うほどに
  違うものだと気がつく
  砂丘の砂、そのひとつひとつが
  自由な砂の本性で
  名前が足りないから
  同じものだと思いこむ
  それはかなしいことだ

あめは雪がとけて降るというのに
ゆきは雨が凍って降ると
信じていたあの日のように
確かめ合うたびに
違うものだと気がつき
その体温で何かがとけて
ほほをつたったり
つたわらなかったりする

  雲は水素酸素水素だ
  雨も水素酸素水素だ
  僕だけの秘密じゃなく
  秘密にしているから
  だれもそう叫ばない

知っているのに
言わないことを
常識と名付けてみる
知っているあなたの名前
あなたの知っている名前
誰も知らない
砂丘の一粒ひとつぶのなまえ
雨を作り出す微熱
水素酸素水素
ほほを濡らす
違うもの、違うもの

  狂おしいほど
  ひとつになりたい
  海岸線でまぎれ込んで
  波と呼ばれて
  それも
  なにかが溶けて
  ざぶんと打ち寄せるから
  違うものだと
  知ってる
  誰も、いわない








自由詩 それぞれの名前で、波にとけても Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-01-04 00:51:16
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