決断
湾鶴

けっして 関わってはいけない
猫の葉で覆われた扉は
口が半開き

あの扉の向こうには
きっと ばけもの が
うじゃうじゃ いて
ひどい言葉をあびせたり
かなしいことや 暴力にも 
うんと がまんしないと いけないだろう
たくさん泣いて謝っても
ゆるしてくれず
そんなところに入った
お前が悪いのだと 
傷だらけの足を さする僕の手だけが
頼りになるだろう

だけど どうしても
やわらかに漏れる 窓の明
信じても いい
暗闇に 蛍が舞う

猫は囁く 出口は無い
扉は囁く それが答え
窓は囁く 感じなさい
蛍は   舞う

ドゲが風にゆらいだ
僕は 扉にふれないよう
お腹をへこませて 体を滑り込ませた
 

まぶしい

いつ 夜が明けたのか
とても晴れいて 太陽
遠くで時鐘が 聴こえる
ちょうど何時か なのだろう

ひどく散らかった家と庭
ひとつずつ 確認
カレンダー、ティーカップ、木製の玩具・・・
醤油瓶、脱ぎ捨てられたままのシャツ・・・
すべて ほこりが沈殿
床にも 砂と 
皮靴・・・すこし大きい

くしゃみが とまらない
昔、誰かが住んでいたようだ
出口はあるのだろう
そして 思ったよりも ここは広い

まずは ほうき と ちりとり から 
生活を はじめよう





自由詩 決断 Copyright 湾鶴 2004-06-20 00:38:18
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