言葉を見たか
大覚アキラ

君は

言葉を見たか

路地裏の突き当たりの
饐えた臭いのする真っ暗闇の中から
ゆっくりと立ち上がる言葉を見たか

君は

言葉を見たか

見知らぬ星座の片隅に
燦然と輝く小さな星から
刺すように放たれる言葉を見たか

君は

言葉を見たか

突き刺さすような悲しみと
抉るような怒りに絶えながら
あの人が噛み締めた唇に滲む言葉を見たか

君は

言葉を見たか

繋がれた手と手の間の
ほんの僅かな隙間に
ゆっくりと灯るように光る言葉を見たか

君は

言葉を見たか

薄曇りの重い空の下
呆然と突っ立っている摩天楼に
流星雨のように降り注ぐ言葉を見たか

君は

言葉を見たか

朝焼けの光の中を
黒々とした点の群れとなって
東に向かって飛んでゆく言葉を見たか

君は

言葉を見たか

駅前の雑踏の中で
家路を急ぐ人々の疲れきった靴底に踏まれ
薄汚れてしまった言葉を見たか

君は

言葉を見たか

穏やかな寝息を立てる幼子の
ふくよかな唇の間から零れ落ちては砕け散る
ガラス玉のような言葉を見たか

君は

言葉を見たか

雨上がりの冷たく湿り気を帯びた
震える空気の中に
七色の虹を描く言葉を見たか

君に

言葉は見えているか


自由詩 言葉を見たか Copyright 大覚アキラ 2007-12-28 16:32:20
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