呼吸
佐々宝砂

マリンスノー
ふりつもる死骸

わたしというイキモノのうちそとで
生きたり死んだりしている生物たち

顕微鏡下の冬の水は活発な動きを示さない
微動だにしないとうめいな殻
わずかに繊毛をふるわせるうすい細胞
春がくるまで
最小限に抑えられる生命活動

星の砂
打ち寄せられる殻

わたしの思惑とはまるで無関係なところで
何かを燃やしたり何かを排泄したりしているわたしの細胞

わたしには死ぬ権利がない
わたしの細胞がわけもなくもえあがるので
わたしは呼吸をつづけなくてはならない

地球もまだ呼吸をつづけていて
今夜がクリスマスイブであろうとなかろうと
今夜もふりつもるマリンスノー
今夜も打ち寄せられる星の砂

とおい空
月光に照らされた雲が動いてゆく


自由詩 呼吸 Copyright 佐々宝砂 2007-12-24 05:37:07
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