カモノハシのパンセ3
佐々宝砂

人を殺してはいけないとおもう。でも人肉を食べちゃいけない理由がわかんない。避妊をきちんとする場合の近親相姦がいけない理由もよくわかんない。わたしはセックスしたくない人とはセックスしない。相手や自分が望まないセックスをしてはいかんとおもう。親子揃ってどーしてもしたいんですという連中がいたら「きちんと避妊してね」という程度のことは言うし妙な趣味の連中だねと思うがそれ以上はとくにどーとも思わない。他の趣味にしてもそうだ、食糞趣味を私は理解できないけど、食いたければ食えばいいやんとおもう。まあ、健康に害がない程度にだけどね。

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やっぱり自分天才な気がしない・・・ほら吹きでバカだとは思うが、ほら吹き加減もバカさ加減もまだ足りない・・・

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罵倒も芸の内。観客を喜ばせるならね。

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自分のゲージュツを表現しようとしてどつぼにはまった、専門学校の卒業制作みたいなものはつくらないようにしよう、なるべくそうしよう。私には私の仕事があるんだし、他人には他人の仕事があるわけで。

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有毒と薬用、それは無意味な分類なんだ。心臓を病んだ人にジギタリスは薬だが、健康な人間にそれは猛毒だ。有毒であれ薬用であれ、ある種の植物にある種の化学物質が含まれるということでしかない。タリウムは・・・確かに毒物だよ、しかしそれはある場面においては非常に有用な物質だ。どのように用いるかは用いる人間の裁量に任される。佐々宝砂クン、きみは多くの言葉を知っているね、きみはそれらの言葉を有用に使っていると断言できるのかい? きみは愚かな人間だ、自らの矮小さで崇高かつ巨大なものを計ろうとする傲慢な人間だ。この星に住む多くの人間がそうであるように、ライフルを手にした幼児のように。

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学校で教わることになっていることを教わらなかった、あるいは覚えなかった人なんていっぱいいるのであり、それは学校の不備のせいばかりではないし教師の怠慢のせいばかりでもないし家庭教育の不足のせいでもない、要するにいちがいに理由が言えるわけねーのだこんちくしょう。

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特定の集団内でまわりと違う表面的行動をとる特定の個人に対する非難を私は好まない。まして、内面まで同じである必要はない。

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ひとが死んだらどうなるか考えるのは個人の自由。無に帰ると考えようとも、煉獄に落とされると考えようとも、蓮の葉のうえで安穏に暮らすと考えようとも。

ただひとつ言えることは、いまこの現世において、
いかなる死後の世界も証明し得ないということ。

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このセカイには、私の知らないものがものすごくたくさんあるとおもう。私の知ってるものは、私の知らないものの1%にも満たないとおもう。私は、いま私の庭の石にとまっている小さな蛾の名前も知らない。

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私のやっとることが不毛に見えるとして、不毛でもいいんよ。だって好きでやっとるのだから。嫌いなのに不毛なことするのはまさにあほやね。ならやめといたらええね。私は好きなことと必要なことをする主義だわね。

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悲しいと言える人は言っていいと思う。よく考えたら私は悲しくさえない。悲しいと書いたら嘘になるし、私は嘘が嫌いなのだ。

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すごいことがいいこととはかぎらんのよ。ひとを殺せるひともすごいよ。ぜんぜんよくない悪いことだとおもうけどさ。

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いろんな人がおるので、害がなきゃ放っておくに限るよ。どれだけ放っておけるか、が、これからの世の中を左右する(よーな気がする)。

実害があるかないか、ではなく、害があるように思えるか思えないか、の、主として大衆による(誰かに操作されているかもしれない)判断が、これまでの社会を動かしてきて、その判断が正しかったかどーかは、少なくとも数十年経たねばわからん。

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歴史より地理が好きだ。
人情ばなしより不条理な話が好きだ。
集合・数列より幾何が好きだ。
哲学より屁理屈が好きだ。
政治より経済の話が好きだ。
倫理より社会の話が好きだ。

エセ科学は嫌いだ。
てけとーなフィクションが好きだ。

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目的に沿った、効果的な方法をとるべきだ。何が原因で問題が起きるのか、感情的にならず冷静に考えるべきだ。そして、自分にできることとできないことを冷徹に考えるべきだ。

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そうだ、私がいまやりたいのは、夏みかんのケーキを焼くことさ。

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かみさま。よいものが消え、そうでないものが残るのはなぜですか。

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得体は知れなくてもいいよ。

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なんでわたしは人を殺さずに済んでいるのか、考えると絶対にねむれないけど、考えながらベッドに入ることにする。

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愛があっても無駄なときあるよ。

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世の中ゴミ箱も必要なのだ。



散文(批評随筆小説等) カモノハシのパンセ3 Copyright 佐々宝砂 2007-12-22 01:32:10
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