かなしみについて
草野春心



  それは光のなかに
  夕暮れどきの街灯にある
  一〇〇円ライターの炎のなかに
  乱反射する水面にある
  やさしい気持ちが消えないように
  祈り続ける心の奥に



  それは闇のなかに
  うらぶれた路地裏にある
  夜の遊園地の片隅
  かたくむすんだ唇にある
  本当のことだけを伝えようと
  もがきさまよう嘘の奥に



  そしてもちろん 君のなかに
  小さな君の記憶にある
  些細な言葉のやり取りや
  傷つけあうことにさえも
  しずかで強い意味がある
  かけがえのないかなしみがある



自由詩 かなしみについて Copyright 草野春心 2007-12-19 22:39:34
notebook Home 戻る