機関車とくじら
あおば

                 2007/12/15




白々と初夏の短い夜が明けて
東の空にも
シロナガスクジラを思わす雲が
ゆっくりと背中を持ち上げる
美しく光ったりして元気がよいなと
見てきたような感想を認めて
怖々とバイクのエンジンを掛ける

大正時代に製作された機関車の
9600型蒸気機関車が牽引する
朝の通勤列車を撮影するには
一番電車で出掛けても間に合わない
線路近くの馴れない町に宿を取るか
線路際にテントを張って夜を明かすか
夜明けと共にバイクに乗って駆けつけるか
それよりも
線路近くに住居を移し
気の向いた季節に
好きなように撮影するのが
いちばん良いように思われるが
住居を移すほどの気持ちがないから
朝が早い季節に一度か二度
気の向いた夜明けに
エンジンを掛けて
バイクに乗って機関車の牽く列車を撮影しに駆けつける
あまり効率のよくない撮影生活をしている
気持ちが薄いのだと言えばその通り

気持ちが濃ければ
線路の近くに住みついて
朝早くから夜遅くまで
列車が走るそのたびに
たくさんの写真を撮し
たくさんの景色を撮し
たくさんの煙と蒸気を吸い込んで

そのあとは
少しぼんやりとして

シロナガスクジラのようにキャッチャーボートに追いかけられて
銛を打たれ捕まえられて殺されて捕鯨母船で処理されて
冷凍されて赤道を越え魚屋を経由して毎晩我が家の食卓に戻るのだ











川越線の朝の通勤列車 指扇←→南古谷


10年後の列車
http://www.youtube.com/watch?v=oI2HzgwT-s0&feature=related


自由詩 機関車とくじら Copyright あおば 2007-12-19 21:19:24
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