雪の結晶
狩心

 わたし知らない
 あなたの海を
(わたしは知らない)
 四季のない南国で生まれたことを
(どんな人間も知っているのに)
 銃口を突きつけられたら 黙ってしまうことを
(どんな人間も知っていながら)
 知らない振りをするのにあなたは
(震えるわたしの手を取って)
(撃たれて、血みどろになって)
 一言も喋らずに
 冬の雫が落ちることを
 おしえてくれた
(乾季に)
(ワニが小さな池で)
 ぶくぶくすることを
 おしえてくれた
 おとぎ話はお風呂の中で消える・・・
(見つめ合えないままに・・・)
 体をそっと、寄せ合うんだって
(小さな吐息を閉じ込めた・・・)
 赤いマフラーが、囁くんだって
(ナイフが落ちて・・・)
 知らない人が たくさん海を 渡ってきたの
(蒸気が)
 言葉を奪っていく(情熱が)
 銃口を溶かす(喋れない)
(二人で覗く)
 赤い顕微鏡の中に(初めて見た)
 雪の結晶
浴槽から水が溢れていく
捻られた蛇口を 誰も止める人がいないように
恋をしてもいいの?
ねぇ・・・
スカートにチェリー(このまま)
裸で崖から飛び降りてもいいの?
パスポートもないのに 外国に行けるかしら
滑り台は人を殺す装置
だからみんな楽しそうに滑る
ねぇ・・・
(ナイフが・・・)
たくさんの海を 渡ってきたの


自由詩 雪の結晶 Copyright 狩心 2007-12-18 02:32:27
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狩心 no まとめ 【 四 】