スクールガール、轢くトレイン
青木龍一郎

線路の踏み切りに女子高生たちがいっぱい寝転がっている光景を偶然にも発見した。
と、同時に僕の耳は電車の到来音も感知した。
「うわ、あぶねえ」と思った瞬間には時既に遅し。
女子高生たちは電車にプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチプチと潰されていった。
電車は一瞬でその場を立ち去り、その場には大量の女子高生の死体と僕が残された。

とりあえず、この死体たちで美人コンテストをやろうと死体に近づこうとすると後ろから声がした。

「近づくな」

僕はハッと後ろを振り向くと、全身の皮膚がただれ、異様に背の小さい老人が車イスに乗っていた。

「その死体に近づいてはならん。それはわしのもんだ」

「わしのもんも何もねえよ。じじい」

僕は言い放った。

しかし、老人は車イスをじりじりと回し僕に少しずつ近づいてくる。
老人の手には刃物が握られていた。正直、死ぬ程怖い。
殺されると直感した僕は、自らも何か凶器を使用しなくてはと手に持っていたビニール袋を覗き込んだ。
中には冷凍サンマが一匹、無造作に放り込まれていた。

その光景に僕は一瞬クラッとした。
わずかな希望の光が絶望に変わった瞬間の「クラッ」。

しかし、贅沢はいってられない。このサンマだって刀になりうる。
僕は冷凍サンマを取り出し右手に構えた。
じじいは包丁を僕の顔に突きつけ、どんどん迫ってくる。

「どうした、ぼっちゃん。手が震えてるよ…。さ、サンマを俺によこせ…でないとお前ごと喰っちまうぞ…」

僕は覚悟を決めじじいに襲い掛かった。
「そりゃあああっ!」
冷凍サンマでじじいを切りつけようとしたが、手には意外な感覚が伝わってきた。

グニャリ

サンマが溶けている。
凍っていないと凶器にも何にもなりはしない。
僕はビビってサンマを手放した。
じじいは車イスのスピードを速めた。

「死にされせええっ!」


僕はギリギリで車イスを交わすと、じじいはそのまま線路上に勢いあまって入ってしまった。
そして、電車。
じじいは電車にグチャリと轢かれた。

雨が降ってきた。


散文(批評随筆小説等) スクールガール、轢くトレイン Copyright 青木龍一郎 2007-12-16 17:56:10
notebook Home