水応記
木立 悟




海へ倒れる曇を見ている
曇から生まれる鳥を見ている
降りそそぐかけらと水の柱と
波をついばむ音を見ている


道の上の羽と屍肉
夜になる曇
夜になる曇
羽と共に降りる曇


つながりを離れたつながりをわたり
青は青にひとつ響く
水の上の
空を去る背


応えが生まれ
放たれて
やがて緑に還る場所を
金は静かに見つめている


果てない花のひとつを取り
ただ手のひらに眠らせている
ゆうるりとあたたかく
有限に目覚める


すぐそばをゆく小さなものに
すべてをわたし 去ってゆく
歩むものの背
空をすぎる背


暗闇に慣れた片方の目に
ひとつの花の声が映る
穂につもる雪のかたち
水の眠りを抄うかたち


こぼれ 洗われ
ひたされる手が
芽になり羽になりながら
傷と応えを放ちつづける















自由詩 水応記 Copyright 木立 悟 2007-12-16 12:48:56
notebook Home 戻る