恋文
よしおかさくら

わざと寄り道をして
今夜
辿り着けないでいる
いちばんほしいものは
まだまだ手に入れないでいよう
おかしな病気に罹って
笑っているのです
あなたは
身につまされる思い
ではありませんか

物事には順番があるなんて説教を
繰り返し
自分から聞かされて
困っていたのでしょう
四角い
食パンからはみ出さないで
白い
布に染みを付けないで
抜き足差し足
ねぇ
疑わしくないのは
あなたが嬉しそうだからです

わざわざ時間を潰して
今夜
間に合わなかった電車
いちばんほしいものは
まだまだ手に入れないで
いよう
おかしな病気に罹って
笑っている
あなたも
身に覚えがある
ではありませんか

あれが良いこれが良い
あてがい扶持されて
はい、はいと云いつつも
ほしいと言ったことがない
その
角を削ってみて
どの
辺りを持ち上げてみて
あちらこちら
ねぇ
憎らしくないのは
あなたが威張らないからです
単なる小石の所為なのか
あなたの
その
角の所為なのか
ようやく躓いたのですが
痛くてなりません
どうか
摩ってみてください
と云われて鎖骨を摩るのは
ねぇ
これが恋文と気づいたからですか


自由詩 恋文 Copyright よしおかさくら 2007-12-12 12:15:29
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