じゃがいも
たもつ



日が暮れていく、僕の脆弱な血管の中を
翼よ、あれがパリの灯だ
けれど、僕の翼はじゃがいもでできている
ポム・ド・テール!
大地のりんごよ、大空を飛べ、飛べったら飛びたまえよ

  エッフェル塔は垂線である
  その垂線をただひたすらに登り続ける僕は言葉なんて知らない
  だから飛んでくる戦闘機をただひたすらに
  両の拳で叩き落すことしかできません
    
    モンマルトルのアパルトマン、西日のあたる一室
    漢字の練習をしているマドモアゼルは僕の懐かしい恋人
    「愛」という字がうまく書けない
    モナムール、そんなに泣いてはいけない
    さあ、僕がじゃがいもを茹でてあげよう
    僕の翼はじゃがいもでできている

  エッフェル塔の下ではマダムたちが落ちてくる戦闘機の翼を茹でる
  あまり味がしないので、僕は塩やバターをたっぷりとつけて食べるのだ
  エッフェル塔の下でたくさん、たくさん食べますよ
  だから、僕、もっと戦闘機を叩き落としたまえ、落とせったら落としたまえよ

      セーヌ川の川上から巨大なじゃがいもがドンブラコと流れてくる
      太郎
      あの中には僕の懐かしい太郎がいるはずだった
      巨大なじゃがいもは護岸を削り、木々をなぎ倒し、橋を壊し
      アデュー
      太郎、海へ

  すべての戦闘機を叩き落し、咆哮!あの月に、あの満月に
  被弾してズタズタ、肉体、落下するエッフェル塔から
  ポム・ド・テール!
  のイメージだけが翼となり大地に激しい口づけ
そして僕はじゃがいもを食べたひたすら食べた死ぬほど食べたエッフェル塔の下で
懐かしい恋人、懐かしい太郎
を抱いて本当は空を飛びたかった





自由詩 じゃがいも Copyright たもつ 2004-06-16 06:28:44
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