ゆりかごと少年
エチカ

少年が泣いていました
つばのある帽子でしたが、ガラスにぶつかって
へにゃりと泣くのが印象的で

忘れもしない
月曜日
誰もいない観覧車
あの小さなゆりかごに
私たちは別々のBOXのなかで
ただただ座っていたのです


枯れてゆく落ち葉を足に
ふわりと流れる光を背に
私たちは
風が紡ぐ子守唄に
ゆらりゆらりと揺れたのです

どこかでニュースが流れています

 ひゅーひゅーひゅるり
 ひゅるりらら
 ひゅるひゅるひゅるりひゅるりらら


 雨の日曜日に死にました

 どうしようもない母でした

 何度も何度も死んで欲しいと

 そう、願った母でした



風が 運んでゆきました

 ひゅーひゅーひゅるり
 ひゅるりらら
 ひゅるひゅるひゅるりひゅるりらら



空が見えました
断片的に

ウソをつきました
日常的に

ほったらかしのウソたちは
じわりじわりと繁殖しました
蜜柑が全部腐ってしまって
私は食べられずに捨ててしまっ た

ゆりかごが
ぶらんぶらんと揺れています
誰もいないと淋しがって
少年は
ぶらんぶらんと揺れています

まあるい箱の真ん中で
私たちは
ぶらんぶらんと揺れたのです




「ウソをつきました おかあさん
 あなたはいつも まっすぐでした」



少年が泣いていました
同じ箱の中で
ぶらんぶらんと揺れながら

コンタクトレンズに光がにじんで
私も一緒に泣いていました

それはよく晴れた
月曜日のことでした







自由詩 ゆりかごと少年 Copyright エチカ 2007-12-10 14:18:40
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