苦痛クッキー
青木龍一郎

僕の好きな人は 僕の知らないところで ボコボコに殴られている
そのころ僕は コンビニのお姉さんに「弁当をあたためますか」って聞かれただけで
大喜びしている

僕は無力だと 涙を流して 焼肉弁当をほおばった
画面の右半分しか写らないテレビを見ながら


沢尻エリカは完全に笑顔を取り戻していた
それに伴い 各局のテレビアナウンサーは 再び視聴者に呪文をかけている
その周波数により 日本国民は 「明日もがんばるぞ」と 希望を半分に折りたたんでまた半分に折りたたんでまた半分に折りたたんでそっと内ポケットにしまって

自ら地獄へ飛び込んでゆく。





僕の好きな人は 僕の知らないところで ボコボコに殴られている
そのころ僕は コンビニのお姉さんに「弁当をあたためますか」って聞かれただけで
大喜びしている

僕は無力だと大泣きしながら 僕はサラダにドレッシングをかけていた
気づいたらそこは漫才ステージの上で
観客はドレッシングを真剣に見つめながらサラダにかける僕の姿を見て
指差して大爆笑する

僕は立ち上がりなきながら叫んだ

「ぼくのすきな人が ぼくのすきな人が いまも いまも ぼう力 を受けている」

会場は静まり返った。

「ぼくには 何にも 何にも ちからがない  おかしいでしょう?さあわらってください」

会場は静まり返ったままだ。
そして、そのうちの一人が「キモ」といった。

おかしいでしょう?

いまここで 僕が いたいいたい となきさけんでも
だれにもきこえないのでしょう?


散文(批評随筆小説等) 苦痛クッキー Copyright 青木龍一郎 2007-12-09 19:29:52
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