客人
木立 悟





ひとりしか居ない器を器ごとひとり呑み干す冷えた指もて




呑みつづけ呑みつづけても酔えぬのはただ両目から流れ出るため




道を燃し壁を燃す手を振りほどき歩むものを知る影の群唱




落ちそうで落ちない水の音だけがからの器を満たしつづける




くたばってくたばってなお生きる道捨ても忘れもせずに呑む道




秘めつづけ深みに深く遠去かる鏡の如き手のひらの熱




雨になり雪になる日のさかずきを染めるまなざし弧を描く髪




冬空に招かれもせず招かれて己れ一人の酔いの客人まろうど











短歌 客人 Copyright 木立 悟 2007-12-09 13:12:57
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