「新しい朝」
ソティロ

新しい朝




新しい風だ
朝、
部屋を出て
飛び込んでくる
空の青
凛としていて
高く、高く
季節は秋だ
靴を履いて
エレベータの前で
きみを待つ


きみを自転車の後ろに乗せて
きみの自転車で駅まで漕いで行く
きみは軽い
信号は青
ビルに切り取られた空
澄んでる
背中に
微かだけど
確かにある
体温


赤信号、
横断歩道の前で
ゆっくりと止まる
急に地面が青く染まって
ぼくは戸惑う
また
新しい風が吹く
ぼくは
失ったものを失いたくない
塗り替えられたくない
要するに、きみが恐いんだ


振り返ると
ビルのガラスに
太陽が空ごと白く移っている
うしろにはきみが乗っている
きみの、黒目の、深いところに
やさしさと恐れがある
その反射光で
舗道が、ぼくたちが、青く、青く


途中の公園に植えられた
木の葉っぱの
緑が
前来たときよりも
抜けている
そんなちいさな発見
透明な空気のなかに
融け込んでいる
なにか
そのにおいが秋だった
そしてそのなにかが
どこまでも澄んで
そのひかりをきみと見ている
また、新しい風
ぼくはペダルを踏む
まだ、すこし恐い
だけど、安心している
公園を通り抜けるとき
銀杏のつよい臭いを受けて
ふたりして笑った






自由詩 「新しい朝」 Copyright ソティロ 2007-12-02 03:59:50
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