青でつながってる
砦希(ユキ)
青でつながってる
どこにいるかも解らぬあなたへ
ひさしぶり だね
わたしもしばらくここへ来ていなかったし
あなたももしかしてきっと ここへはもう来ていないのかな
だからいえる
「ひさしぶりだね」
青でつながってる
どこにいるかも解らぬあなた
出逢って間もない頃
山手線のどこかの駅の
狭い1Kのわたしの家
狭い浴室で
わたしを抱いたあなた
それっきり
逢うことのなかったあなた
しめた、って
思ったかしら
でもわたし
行きずりで人に抱かれたのは
あなたがはじまりでおわりだった
なのにちっとも 傷ついていない
ひとつ隠していたことがあります
その出逢いの 何年か前から
わたしはあなたを知っていた
わたしはまだ十代で
あなたは遠くで詩をかいていた
あなたの詩に 恋をしていた
あなたの詩の 途方もない悲しみと
あなたの詩の 何処にも行くことができないところに
恋をしていた
(もしかしたら 哀れんでいた)
(もしかしたら 共鳴していた)
山手線のどこかの駅で
あなたとはじめて出逢ったとき
わたしはそのことを知っていて
あなたに近づいたのです
まったくの偶然がよびよせた出逢いだったけれど
わたしはそれを逃してはいけないと
あなたに近づいたのです
このひとの からだを 見てみたい
このひとの こえを 聞いていたい
このひとの こころを 覗いてみたい
そう思って
あなたに抱かれたのです
あなたはひととき
わたしを満たしてくれて
わたしもひととき
あなたを満たせたのかな
空洞みたいなあなたの詩 は
あなたの心を映しているのね
青でつながってる あなた
いまどこにいるの
知りたくないけど
問いたいのです
まだあなたはもがいているのですか
生きるという そのことに