[:horn
プテラノドン

まただ。―別れ際の挨拶に、
握手をするもんじゃない。
居心地のいい部屋を出て行く時と同じ。
ドアノブから手を離せなくなる。そして、
僅かながらにあいた扉の隙間をすり抜け、
部屋の中へと鼠がかけ込む。次いで、野良猫も。
そのことで僕はますます気分がよくなっていったが、
残念なことに、彼女はそういう類の出来事を
ことごとく受けつけなかった。

「挨拶ぐらいしろってんだ、ゴキブリ野郎!」
受話器に向かって怒鳴りつける、女。
鼓膜の破れた、インターホン。
真っ赤に聞こえる笑い声。


自由詩 [:horn Copyright プテラノドン 2007-11-29 00:13:23
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