Rainy / Titan
たりぽん(大理 奔)

午前四時の透明な気圏に
黒雲が闇を重ねようとしている
抗うように惑星が輝いたのは
いつも忘れてしまった季節
霧雨が街を満たそうとする

   爪を立てる前のつややかな果実だ
   結界の向こうにその潤んだ正体を
   想い焦がれるたびに甘酸っぱく
   木星のそばにビー玉のようにばらまく

道程みちのりではない生き方
だから孤独に
輝き燃え尽きることもない闇に
凍えたとしても
   
あなたのためにいきて
私だけがたどり、届く果てで
黒髪の奥の左耳に伝えたい
忘れた季節の音
タイタンでは朝、雨が降るのです

   今日も爪を立てる
   傷つけるためではなく
   その果てでまじわるための

それは二人だけの儀式
背中に流星の痕残して
深いふかい旅に出る
軌道とは
届かなくても戻ることはない
だれも辿らない旅路の名前
ほんのわずかだけ寄り添って
あとは凍えていくだけの
熱量




自由詩 Rainy / Titan Copyright たりぽん(大理 奔) 2007-11-27 21:37:00
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