ノッキンオンヘブンズドアー
しゅう

今日、二十歳になる君が、初めてドアのたたき方を知る
マナーなんてない、ノブを蹴破る
後ろ指差して笑うやつがいる
警官は君の腕をつかむだろう
引きずられながらも鳴り響くベル
鉄、屑、なんて呼ぶかは自分で決める
ルール蹴り上げれば歪みだし脱線
落ち着いてあたり見渡せば暗澹
ランタンもない、判断つかない
でも初めてこの星をノックした
生まれたばかりの赤ん坊が泣く
嬉しいも悲しいも綯い交ぜの感情
頑丈に敷かれた線路壊し誕生
おそるおそる歩き出せば跳ね返る足音
遅れながら足元についてくる万歳

長く続く線路の向こう、隕石が落ちたとテレビががなる
群がる大人はパラソルなんかさして
捻じ曲がったレールの横でピクニックしてる
その数キロ後方じゃ、途切れた線路を星が横切り
子供たちは平行じゃない歩き方を知った
朝の冷えたレールの上を、はだしでわたる子供たちの群れ
少しばかり乱れた足並みが心地いい
ここからどちらへ歩き出せばいい
このままどこまで歩いていけばいい

桜がやたら遅咲きの春、蝉の抜け殻ばかりの夏
秋が少しずつ短くなって、冬がどんどん暖かくなってた
ヒートアイランドとかエルニーニョとか現象にカタカナで名前をつけて、安心してる僕は
気づけば違う線路に乗ってた

今日、二十歳になる君が、初めてドアのたたき方を知る
学校じゃノブの下を三度たたいてた
おれのドアを君が蹴破って入り込んでくる
後ろ指差して笑うやつがいても
警官が君の腕に手錠かけても
今日、踏んだ地団駄の数、悔しい分だけこの星をノックする
ハロー、グッバイ、いえるだけ言おう
明日、隕石が落ちるかもしれない
それでもかわす軽薄な約束
また会えるよなんて、なぜか信じてる

長く続く僕らの影は、どこまで伸びても空へは届かない
背負い込んだ大人は前のめりに倒れた
抱き合えば影だって少しずつ歩くのに
這うように歩く、How old are you ?
今日、生まれたばかりの僕らが、昨日見捨てた自分と抱き合う
明日、降り注ぐ隕石の下で


自由詩 ノッキンオンヘブンズドアー Copyright しゅう 2007-11-27 04:56:48
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